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眼瞼下垂

公開日: 2016-09-13
更新日: 2024-02-20

医師紹介

眼瞼下垂とは

瞼を上にあげるために必要な筋肉の力が弱くなったり、その筋肉を動かす神経の機能が低下したりすることで、瞼をあげることが難しくなり、それによって瞼がさがってしまう状態です。筋肉や神経には問題がなく、皮膚のたるみや瞼のさがりだけが原因の場合や、瞼のけいれん(眼瞼痙攣)など、ほかの疾患が原因の場合は、偽性眼瞼下垂(ぎせいがんけんかすい)と呼ばれ、正確には眼瞼下垂とは区別されます。

原因

原因には、先天的なものと後天的なものがあります。

先天性眼瞼下垂

生まれつき眼瞼下垂の状態である場合です。瞼をあげるために必要な神経(動眼神経)が麻痺していたり、そもそも瞼を上にあげる筋肉が十分に発達していなかったりすること(上眼瞼挙筋の形成不全)が原因となります。

後天性眼瞼下垂

成長過程や大人になってから、何らかの原因で眼瞼下垂の状態になる場合です。最も多い原因は加齢によるものですが、そのほかにも重症筋無力症や動眼神経麻痺などの神経や筋肉の疾患が原因になることもあります。いずれも瞼をあげる筋力が低下することで起こります。

症状

片目 あるいは 両目の瞼がさがってきます。さらに、それによって目が開きづらくなるため、視界が狭くなりものが見えづらくなります。
 
また、頭痛や肩こりなどの症状があらわれることもあります。これは、本来の筋肉ではあげられなくなった瞼をおでこの筋肉を使ってあげようとするため、その延長に位置する首や肩に負荷がかかることから起こる二次的な症状です。

検査・診断

一般的な視診や瞼をあげる筋力の動き(挙筋機能)などから診断をします。見た目での判断基準としては、正面をみた状態で、黒目の中心に位置する瞳孔に上瞼がかかっていると眼瞼下垂と判断されます。また、原因が神経や筋肉の疾患によるものかを判断するため、症状があらわれた時期や、1日のうちでの症状の変化の有無(日内変動)、瞳孔の状態、さがっている瞼が片方か両方かなども確認します。
 
そのほかにも、代表的な合併症である視力の低下やドライアイなどを起こしていないかを確認するため、視力検査や涙の量を測るシルマー試験などを行う場合があります。

治療・治療後の注意

外科的治療が一般的です。手術によって弱っている筋肉を吊り上げる または 縮めることで改善します。皮膚にたるみがある場合は、余分な皮膚の切除も同時に行われます。大人であれば基本的には局所麻酔で行われ、状態によっては日帰りでの手術が可能なこともあります。
 
手術後は順調に経過することがほとんどですが、まぶたの腫れは比較的長く残ります。2週間から1か月ほどかけて自然な状態になり、ほとんど目立たなくなるには数か月から半年ほどかかります。そのほか、目が完全に閉じられなくなったり(兎眼)、再発をしたりすることがありますが、その場合は再度手術をして調整をします。
 
神経や筋肉の疾患が原因の眼瞼下垂が疑われる場合には、神経内科や脳神経外科の受診が必要になります。

予防

原因の多くは加齢であるため、特別な予防法はありませんが、長期のハードコンタクトレンズの使用やかゆみなどで目をこする行為は、摩擦の負荷から眼瞼下垂を起こしやすくするとされています。そのため、ハードコンタクトレンズではなく、ソフトコンタクトレンズや眼鏡を使用したり、目をこすらないようにしたりすることは、眼瞼下垂を起こすリスクをさげることにつながります。

医師紹介

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鈴木 幸久 医師
弘前大学医学部卒業

1998年 東京医科歯科大学病院、1999年 湘南鎌倉総合病院、2001年 川口工業総合病院、2004年 JCHO三島総合病院(2007年より眼科医長、2011年4月より眼科部長)。日本眼科学会眼科専門医。専門分野は神経眼科。