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睡眠時無呼吸症候群

公開日: 2016-09-13
更新日: 2024-02-27

医師紹介

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠中に呼吸が止まったり、呼吸がしにくくなったりする疾患です。通常いびきをともないます。正常な呼吸ができなくなることで、脳や身体は不足した酸素を補おうと、睡眠中でも無意識に覚醒してしまいます。このように日常的に睡眠の質が低下することで、日中の眠気や注意不足から事故につながります。さらに、脳や身体の低酸素状態が繰り返されることで、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の合併症にもつながります。

原因

ほとんどの場合、呼吸をする際の空気の通り道がふさがれたり、狭くなったりする以下のようなことが原因となって起こります。中でも、肥満は最大のリスク要因とされています。また、男性のほうが上半身や顎、首周りなど、呼吸に関連する部分に脂肪がつきやすいため、男性のほうが睡眠時無呼吸症候群にかかりやすい傾向があります。
 
〇 主なリスク要因

  • 肥満
  • 加齢
  • 顎が小さい
  • 舌が大きい
  • 扁桃腺が大きい
  • 口蓋垂(のどちんこ)やその周囲が大きい
  • 鼻の奥が狭い(咽頭扁桃 / アデノイドが大きい)

など

症状

主な症状には以下のようなものがあります。

〇 睡眠中の主な症状

  • 呼吸停止
  • 呼吸困難
  • いびき

など

〇 睡眠中以外の主な症状

  • 日中の強い眠気
  • 熟睡感がない
  • 疲労感
  • 不眠
  • 起床時の頭痛

など

検査・診断

問診で、睡眠中の呼吸停止や日常的ないびきなど、特徴的な症状の有無を確認します。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠中の呼吸の状態などを調べる検査が行われます。
 
検査には、自宅でも検査が可能な簡易検査と、1泊の入院をともなう精密検査があります。いずれも、呼吸の状態や体内の酸素濃度などを計測する検査装置を、鼻の下や指などの身体に装着し、ふだんと同様に睡眠をとることで検査します。どちらの検査を行うかは、症状の程度や持病の有無、個人の生活状況などによって検討されます。

治療・治療後の注意

原因や重症度によって異なりますが、基本的には睡眠中にふさがれたり、狭くなったりする空気の通り道を何らかの方法で改善させることです。主な治療には以下のようなものがあります。

CPAP(シーパップ)治療

鼻に空気を送り込むCPAP装置を使う治療です。睡眠中はマスクを鼻に装着し、CPAP装置から空気を送り込むことで、睡眠中の無呼吸を防ぎます。日中の眠気など、自覚症状が強い場合や、検査結果で症状が中~重症と診断された場合に検討されます。

OA療法(マウスピース / 口腔内装置)

睡眠中にマウスピースを装着する治療です。マウスピースで下顎を上顎よりも前に出すように固定することで空気の通り道を確保します。主に、軽~中等症の場合に検討されます。

外科的治療

空気の通り道をふさいだり、狭くしたりする原因となっている部分を、手術によって取り除いたり、位置を調整したりします。具体的には、口蓋垂(のどちんこ)とその周囲を切除して小さくする方法や、顎の位置の調整をする方法などがあります。

その他

肥満は睡眠時無呼吸症候群のリスク要因であるため、食事や運動をはじめとした生活習慣を見直し、減量することも治療の一環です。また睡眠時、仰向けの姿勢だと舌が落ち込み、空気の通り道がふさがれたり、狭くなったりしやすいため、横向きやうつ伏せの姿勢で眠ることが推奨されます。

予防

空気の通り道がふさがれたり、狭くなったりする要因をつくらないことが予防につながります。特に肥満は、睡眠時無呼吸症候群の最大のリスク要因とされているため、肥満傾向の場合は健康的な食生活や適度な運動など、生活習慣を整え、減量することが効果的です。

そのほか、寝る前の飲酒や睡眠薬の服用なども、首周りの筋肉を緩め、空気の通り道をふさいだり、狭くしたりすることにつながるため、控えましょう。また、睡眠時の姿勢を横向きやうつ伏せにすることも、空気の通り道を確保することができるため、推奨されています。

医師紹介

山口 敏行 の画像
山口 敏行 医師
1994年 長崎大学医学部医学科卒業

2004年 埼玉医科大学感染症科・感染制御科講師、2018年 東日本成人矯正医療センター感染制御部門長、2022年 東京慈恵会医科大学感染制御科教授、同附属柏病院感染制御部診療副部長。総合内科専門医(日本内科学会)、呼吸器専門医(日本呼吸器学会)、感染症専門医(日本感染症学会)。専門分野は呼吸器感染症、HIV感染症、耐性菌感染症、感染性廃棄物、矯正医療。